特集

川口成彦フォルテピアノリサイタルシリーズ 第1回レポート

古楽器で演奏されるベートーヴェンの音(2020/11/20)


「こんなベートーヴェン、聴いたことがない!!」

 

興奮をおさえきれないままロビーに出ると、同じ感想を口にされている人が複数いて、その日客席にいらした多くの方が同じ思いを抱いたのだと感じました。



ベートーヴェン・イヤーの今年は、コロナ禍においても様々な『ベートーヴェン企画』が全国のホールで開催されました。たくさんの曲を世に送り出したベートーヴェンだけあって、どちらかと言うと“好みの曲を聴きに行く”感覚でホールへ足を運ばれる方も多いことでしょう。





そこにきてこの企画。この音、この演奏。



川口成彦さんと共に、この日のフォルテピアノを提供・調律してくださり、トークゲストまで引き受けてくださった梅岡楽器の梅岡俊彦さんとのトークは実に楽しく、そして時に深く、演奏者と調律師それぞれの視点から語るフォルテピアノとベートーヴェンのお話に魅了されます。





演奏が始まりました。
激しく情熱的なイメージのあるベートーヴェンが、とてつもなく儚く優しい旋律を描く。
それを透明感あるピアノで川口さんが演奏する。
贅沢な時間が続きます。





「悲愴」の第2楽章が、こんなにも身体に染み入る音楽だったことに改めて気づきました。





初期ソナタの名曲「月光」が奏でられます。
最初の一音を聴いたところから、い、息がつまりそうです。
自分の知っている「月光」ではない。本当はこんな曲だったのか。
霧がかかったような薄暗い月明かりから始まる調べは、とてもとても立体的でした。
川口さんは、月明かりの湖に独り小舟に乗っているような「月夜の舟歌」と言っています。





静かにはじまった第1楽章とは打って変わって第3楽章では、フォルテピアノに激しく挑むピアニストの意気込みと、ベートーヴェンの“エネルギー(熱)の大きさ”が重なりました。


楽器のキャパシティの「限界突破」を試みた・・・とは、川口成彦さんの言葉です。

 



あっという間に時間が経ち、第1回目のベートーヴェン初期の公演が幕を下ろしました。



次は、中期!


あの誰もが一度は聴いたことのある「エリーゼのために」や「熱情」も、1821年に作られたピアノ(ジョン・ブロードウッド)の音と共にまた違った表情を見せるのでしょうか。興味が尽きない時間が、1225日に再び訪れます。
そして第2回のゲストは、指揮者の茂木大輔さん!お二人のトークも楽しみです。

フェニーチェ堺 広報担当